かもめ食堂

かもめ食堂(監督:荻上直子 原作:群ようこ )

2006年3月公開。もう14年も経つのかと思いつつ、何度目かの鑑賞です。

フィンランドのヘルシンキで日本食堂を経営しているサチエは、図書館で知り合ったミドリを食堂のスタッフに迎える。お客は、日本アニメおたくの青年しかいない店にボチボチ人が集まるように。悩みをかかえたフィンランド人、荷物が出てこなくなって困っている日本人など、個性的なお客さんたちが、かもめ食堂に集まり、サチエたちの温かな心がこもった料理でなごやかな気持ちになっていく。Amazonより

この映画をリピートしてみていたころ、私は夢物語だと思っていた。本当に悪い人も出てこないし、悲しいこともつらいことも起こらない。そりゃあ作り話だものね、と。

けれど2020年の今見て、こういう世界はすぐそばにあると実感する。

一番好きなシーン

この映画で一番好きなシーンは、もたいまさこさんが演じるマサコさんがスーツケースを開けるところ。このシーンを見たいがために何度も鑑賞しているようなものだ。

マサコさんは単身でヘルシンキに到着したものの、スーツケースが届かなくて困っていた(困ってる風には見えないけれど)。かもめ食堂で「大事なものが入っていたでしょうに」と問われて、「大事なものはいっていたかしら」とくうを見る。

この時、映画を見ている私たちもきっと考える。「大事なものってなんだろう」って。目の前の、いま必要なものではなく「大事なもの」。

また別の日、「マサコさんはなぜヘルシンキに来たんですか?」という問いに「ここに住んでいる人はみんなゆったりとしているように見えたから」と答える。

北欧の人たちがゆったりしている理由を、かもめ食堂の常連であるトンミ・ヒルトネンは「森があります」と答える。マサコさんはそう聞いてすぐに森に行き、アンズタケを両手いっぱいに採る。でもそのアンズタケは消えてしまう。けれどマサコさんは気にしない。

消えてしまったアンズタケのことは気にせず、ヘルシンキで暮らしていたら突然スーツケースが手元に戻ってくる。開けるとそこには一面の、光り輝くアンズタケ(この画像は映画の画像ではありません。映画のこのシーンは圧倒的に美しいからぜひ本編で見て欲しい!)。

ここで再び考える。「本当に大事なものってなんだろう」「人生において、本当に大事なものってなんだろうか?」と。

丁寧に暮らすこと

ゆったりと丁寧に暮らしたいと願いながらも、毎日何かに追いかけられているような日々の人も少なくない。それは14年経った今も変わらないように思う。

でも、少なくとも「かもめ食堂」を見ている間は、なににも焦らず、なににも慌てず、なににも追われることのない時間を過ごした。映画を見終わって、おにぎりやシナモンロールを食べたくなって、丁寧に手を動かした。

この気持ちに、このスピードに、戻ることができたのはかもめ食堂を見たからだと思う。「ここ」という目安を、それぞれの人の心に教えてくれる。まったく、やっぱりすごい映画だなあと思った。

人はいつからでも変わることができる。この夢物語のような世界に行くことができる。

ほんの少し、自分のために立ち止まることができたら、次はきっと自分のために美味しいコーヒーや紅茶を淹れることだってできる。自分のためにちょっといいお菓子を買って、じっくり味わうことだってできる。

丁寧に暮らすこと、それは所作をゆっくりすればいいってもんじゃないと思う。ひとつひとつの小さな判断を、雑にせず、妥協せず、適当に済ませず、自分に対して丁寧に心地よさを追求しながら暮らすことなんだと思う。

それは簡単でも楽でもないことかもしれない。でも、続けていけば心地よい世界が待ってることを、この映画は教えてくれる

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